イチからつくり直したほうが速い、という幻想
岩田「いまあるものを活かしながら手直ししていく方法だと2年かかります。イチからつくり直していいのであれば、半年でやります。」
任天堂の元社長であり、天才プログラマーと呼ばれた岩田聡氏が、MOTHER2の開発が行き詰まっているときに糸井重里氏に放った言葉だ。
技術的負債が詰まったプロジェクトに参画したプログラマーなら誰もが「イチからつくり直したほうが速い」と考えるだろう。
しかし、「イチからつくり直す」という選択肢は理想に見えるが、現実は残酷だ。
- 我々は天才プログラマーではない
- つくり直している間はお金を生み出さない
- つくり直しても完成する保証はない
- 最適解を選択し続けたはずが、完成する頃には別の負債になっている
「イチからつくり直す」という選択は、良く言えば「投資」、悪く言えば「博打」。経営陣が「リファクタリング」や「つくり直す」を嫌う理由は、まさにここにある。
世のプログラマーよ、現実と向き合おう。
「つくり直した方が速い」という幻想に囚われず、いまある状況をどう改善するかを考えよう。 汚いコードをリファクタリングすることで得られる経験値は、つくり直しを選んだ世界線では決して得られない貴重なものだ。
「イチからつくり直す」という選択肢は、確実に完成させられる自信とやり遂げる覚悟、そして経営陣を説得できるだけの材料を揃えてから選ぶべきだ。